研究者って自称ギタリストと何が違うの?

クソ田舎助教から、政令指定都市に逃亡しました

コスパの高い大学って?

このエントリーをはてなブックマークに追加

最近、コスパコスパよく聞きますよね。
結婚はコスパが悪いとか。
コスパの高いレストランとか。

実は大学についても言われることがあります。
コスパの高い大学、って。
お買い得大学やお買い損大学とかも言われますね。


一般的には受験や就活の場面において使われる言葉のようで、意味合いとしては、
「簡単に入学できるわりに、名門っぽく思われる大学」
という感じのようです。


つまり、
コストに当たるのが、受験勉強の労力・時間
パフォーマンスに当たるのが、他者からのウケ
ということのようですね。


これは実にくだらないです。
と言うのは、これって言い換えると、
できるだけ中身が空っぽのままで名門大学卒の称号を手にしたい
ってこと。
つまり、こんなことを言っている人間はすなわち、
コスパの悪い人材になろうとしている
ということに他なりません。




じゃあコスパのいい・悪い大学、って議論は無駄なのか?
いやいや!
コストとパフォーマンスの定義を変えることで、もうちょっと意味のある話ができると思います。
というわけで大学のコスパについて考えてみました。




まずはコストと、そのパフォーマンスについて定義しましょう。



コスト

これはもう、学費以外あり得ません。
名前通りお金です。
これはなぜかというと、次の通り。

人生におけるコストと言えば、お金以外なら時間と労力があるかと思います。
しかし、どの大学も入学できる年齢は同じ、卒業までにかかる時間は同じです。
とすると、時間は大学によって異なるコストになり得ません。

労力についてですが、受験勉強や卒業までにかかる労力、時間は全て、自己研鑽のための労力です。
受験にしか役立たない労力や、単位取得にしか使えない労力を費やして、無駄だったわ〜とか言うようでは、そもそも生き方を間違えています。
大学入学も、大学卒業も、全て自分に実力をつけるため。
むしろ「いっぱい勉強できる」というのはコストではなくて高パフォーマンスのほうじゃないかとすら思えます。

大学という研究・教育機関においては、勉強の大変さも勉強に必要な時間も、それはコストと呼べるものではないでしょう。
よって、ここではコストを、学費とします。



パフォーマンス

これは難しいです。
大学に何を求めるかは人それぞれですから。
なぜその大学を選んだか、いくつか考えるだけでもこんな感じです。

・就職がいいから
・資格を取るため
・威張れる大学名だから
・学びたいことを学ぶため
・部活するため
・住みたい土地にあるから
・研究力が優れているから
・研究設備が優れているから
・師事したい教員がいるから

これを平均化して、得られるものが多い大学なんて議論が出来るのでしょうか?

・・・それを、あえてしましょう!
多少強引ですが、多くの人が望むものが叶う大学は、みんなが行きたいと思うはずです。
みんなが行きたいと思う大学は、入試の競争率が高くなって、結果的に受験の偏差値があがるはず。
ということは、平均的に、多くの人がパフォーマンスが高いと思う大学は、必ず偏差値が高いはず!
というわけで、多少強引ですが、受験偏差値を、大学のパフォーマンスとしてしまおうかと思います!
異論は認めます。。。。



結果

工学系の学部について、縦軸に学費、横軸に受験偏差値として、各大学をプロットしてみました。
学費はこちらのサイトから。
工学部・機械工学科の学費ランキング |大学・専門学校学費ランキング
2012年度の初年度費用です。
当然ながら国立大学は一律同じ金額です。


偏差値は、細かい学科別ではなく、今年度のベネッセの学部別偏差値表からとりました。
偏差値一覧 | Benesse マナビジョン
パフォーマンスとしての指標なので、ざっくりした感覚で捉えるくらいでいいかと思います。


2012年度の学費と、2015年度の偏差値というミスマッチはありますが、大きく差はないでしょう。
今回、比較に用いた大学とデータは以下の通りです。


f:id:chinu48cm:20151014194503j:plain


このままじゃわかりにくいので、グラフにしてみます。

が、国公立大学と私立大学では偏差値を出す母集団が異なりますので、比較するには偏差値も少しギャップがあります。
感覚的には私立大学を-3、国公立大学を+3ほどすると、早慶旧帝大と同レベルになるので、ちょうどいいように思いました。
よって、私立大学は-3、国公立大学は+3という補正もいれてみました。
上のグラフが生データ、下のグラフが補正済みです。

f:id:chinu48cm:20151014193750j:plain

全体的に言えば、右下にあるほどコスパが高い、左上にあるほどコスパが悪い、ということになります。

これを見ると私立大学が青い帯に集まり、右肩上がりになっているように見えます。
私立大学はコストとパフォーマンスに相関がある、と言えますね。
いい私大ほど、学費は高いってことです。
この帯の中でも、左上側の端に近い方がコスパが悪い、 右下の端に近い方がコスパが高いということになります。

具体的に見ていきます。
中部大学や東海大学は青い帯の左上の端なので、偏差値はそれほど低くないのですが、コスパはあまり良くない方と言えます。
東京理科大学は青い帯の右下の端なので、意外とコスパがいい方だとわかります。
早慶上智は青い帯の中央付近なので、私大のコスパとしては平均的と言えそうです。

MARCHからは明治大学青山学院大学がありますが、どちらも左上に寄っているのでコスパは悪め。
関西からは、同志社コスパ高いですが、関大は平均的、立命館も平均的ですがちょっと悪めと言えます。
名古屋では、名城大学コスパ高いですが、愛工大はちょっと悪めですね。
九州は、福岡大学、福工大、崇城大学などいずれもコスパは高めです。
地方に行くほど、学費は低いのかもしれないですね。


が、やはり何と言っても、国公立大学コスパの高さは目を見張ります。
旧帝大東工大に入れるなら、コスパ最強と言えます。
早慶あたりはパフォーマンスも高く、よい大学ですが、やはり国公立と比べるとコスト(学費)はバカになりません。
公立大学も、それほどパフォーマンスが高いわけじゃないところも多いですが、コスパで言えばやはり、私大よりいいと言えるでしょう。


ところで、なんだか国公立の分布エリアに私大の青い点がひとつ。
なんだここは? と思って調べてみると、豊田工業大学という、トヨタがやっている大学のようです。
トヨタの社会人学生や、将来トヨタで働く一般学生を育てるための大学、という側面があるようで、一般学生はかなりの人数がトヨタに就職できるそうです。
さらに、そういう性質でトヨタがバックアップしているので、学費も私大としては最安レベル。
というか公立大学レベルの学費です。
そりゃコスパ高いわ。。。
第一工業大学も、偏差値は低めですが、コスパで言えばかなりいいですね。


左上に外れてる私大もありますが、ここで名前を出して議論することは控えておきます。
だって、偏差値に反映されない魅力がきっとある、のでしょう、たぶん。


結論

コスパはどう頑張っても国公立大学が最強。
・私大も、有名私大なら大学で得られるものは大きいが、やっぱり国公立大学と比べると学費はけっこうかかる。

これらはわりと当たり前のことですね。

・全体的には、私大はいい大学ほど学費が高い傾向。
豊田工業大学国公立大学並みのコスパ

このへんはちょっと発見でした。