ポスドク対象の婚活におけるフェルミ推定
絶望的な確率 : 恋愛・結婚・離婚 : 発言小町 : 大手小町 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
なんだか婚活市場において優良物件がどれだけあるか、というのがフェルミ推定されています。
フェルミ推定ってあれね、就活とかで聞かれるってうわさのあれね。
「シカゴにはマッチ売りの少女は何人いると思いますか?」
「シカゴの人口が 800 万人と仮定して、そのうち少女は 5% とすると 40 万人で、そのうちマッチを売っているのは……」
って、延々根拠はないけどさも根拠のありそうな数字を出して妥当っぽい数字を推定する、っていうあれね。
じゃあポスドクの場合にしぼるとどうなんだろう?
最近じゃ、オタクと結婚するといろいろ捗るよ! とも言われてきていますしね。
われわれ研究者は、理系オタクを職業にしてるわけですから、ひょっとしたら婚活市場で人気爆発じゃないか!
高学歴、性格よし、温厚、干渉しない、互いを尊重できる、言うことよく聞いてくれる、とかね。
じゃあ、我々のなかに婚活で優良評価される人物はどれだけいるのでしょうか?
満たすべきとしてあがっている条件はこれらしい。ふむ。
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男である
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30-35歳である
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平均的な年収である
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×なしである
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未婚である
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マーチ以上の学歴である
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借金のない方
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フツ面以上の人である
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やさしくDVしない人
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太ってない方
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はげてない方
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浮気しない人
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タバコ吸わない人
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都市近郊に住居している
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同居なしである
の 15 項目だそうな。
生命系における博士研究員 (ポスドク) 並びに任期制助教及び任期制助手等の現状と課題
第2回バイオ系専門職における男女共同参画実態の大規模調査の分析結果
をもとに計算します。
いろんな資料を入れ子にして計算するのってどうなんだ? と疑問に思いますが、まとまった資料がないのでご勘弁を。
まあ、概算ってことで。
フェルミ推定なんで。
じゃあまずポスドクの総数から。
ポスドクの数は 2009 年 11 月現在で 15,220 人だそうな。
そのうち男性が約 75% で 11,423 人だそうです。
年齢 30 ~ 35 歳だと 52% で、もっとも比率が高い層だそうな。そうだそうな。
で、ポスドク特有、と言いますか、冒頭の増田が入れていない項目のひとつとして設定すべきかなと思うのが、日本人であることかなと思います。
ポスドクのうち日本人は 77% だそうです。
つまり、大前提となる 30 ~ 35 歳日本人男性ポスドクは単純に掛け算すると約 4570 人ということになります。
で、収入。
サラリーマンの平均年収が 432 万らしい。
(年収ラボより)
その年代のポスドクだと年収 400 万以上は 56.4% だそうな。
つまり、半分以上のポスドクは平均的な年収以上もらっているってことになりますね。
さらに 300 万以上からなら 86.4% になる。
まあ、無給も含む年収 200 万以下のワープアも約 3.6% ほどいて、悲惨な方は悲惨ですが、大方は案外普通にもらってるんですよね。
社会保険やら年金やら健康保険は自力で、って方もいらっしゃると思いますが。
問題は任期付の非正規雇用ってだけで、雇用されているときはそんなに苦しいわけじゃない。
ここをいかに婚活女子にアピールできるか、大事ですよね。
次に婚姻状況。
未婚は 51.1% だそうな。
バツがあるかないかはわからないけど…… あんまりない気がする。
まあバツなし未婚は 50% ってことにしましょうか。
学歴マーチ以上というのはほぼ全員満たす、と仮定したいが。
しかし、関東の文系女子が思うマーチ以上と西日本理系研究者が思うマーチ以上はだいぶ差がある気がする。
我々からすれば地方国立大博士はもちろんマーチ以上に含まれると思いますが、関東婚活女子に通じるでしょうか…… 通じると願って。
95% いけるとしましょう。
いや、通じない気がするが…… まあいいか。
借金は…… 多くの方は奨学金を返せていないと思います。
これを借金に含めるか含めないか?
婚活女子によっても判断が変わると思いますが、なんにも知らない女子からすると、え、35 歳の人が奨学金? 苦学生? 実家貧乏? って思うかもしれないし、あんまりいい気持にはならない方もいるんでしょうね。
てことで、女性の判断による、ということで借金有は 35% くらい、ということにしましょう。
よって借金無しは 65% ってことで。
あとは主観ぽい。
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フツ面以上の人である: 相場の 50% より少ない、って仮定して、全体の 40%
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やさしくDVしない人: 研究者はステレオタイプならオタク気質で他人に無関心、それを温厚と言ってもいいかも、みたいな感じにして、95% クリアー。でも失職したら DV なるかも?
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太ってない方: うーん。世間より多い? 90% クリアーで。
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はげてない方: 完全にはげてる研究者ってみたことある? 俺はあんまり見たことない。なんでだ? 俺のまわりだけ? 98% クリアー。
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浮気しない人: これはまあ、浮気するひまもないのが正解だけど、機会があればする人は多そう。でも、お金もないので女性がついてこない? 70% クリアー。
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タバコ吸わない人: うーん、最近はあんまり吸わない人多いけど、やっぱそこそこ吸う人いるよね。65% クリアー。
あと。
同居なしである、都市在住である、の 2 つは、いつどこに転勤して、どこで働くかわからない性質上、評価不能ってことにしましょう。
まとめ。
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ポスドクである 15,220 人
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男である 11,423 人
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30-35歳である 5940 人
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日本人である 4570 人
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×なし未婚である 2285 人
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マーチ以上の学歴である 2171 人
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借金のない方 1411 人
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フツ面以上の人である 564 人
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やさしくDVしない人536 人
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太ってない方 483 人
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はげてない方 473 人
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浮気しない人 331 人
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タバコ吸わない人 215 人
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都市近郊に住居している
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同居なしである
というわけで、
婚活の場にポスドクがでてきたら、日本に 215 人しか結婚にふさわしい人はいない、ってことになります。
否、215 人が超優良物件ってことになります。
みなさんの実感と当てはまりますか?
ええー、そんな少なくないやろ、って直感的には思いますが、冷静に考えると確かに収入そんなにないかも、とか思い当たりますね。
全体で言えばポスドクの 1.4% だけど、男・30 ~ 35 歳・未婚者・日本人ですでに 2285 人ですからね。
それなら 9.4% が当てはまるってことになります。
うん、そんなもんな気がする。
パラメータを少なくしたら結婚できる相手は増えるはず、だけど収入の条件だけは変えないほうがいいよ! と冒頭の増田記事にも書かれておりましたが。
ポスドク相手ならそれは難しいところ。
いまの 500 万もらってるけど 3 年後の見通しはほぼ絶望、という人より、いま 300 万だけど、そろそろパーマネントねらえるかも? な人にしないさい、と言えるでしょう。
つまり、収入というのは現在の年収ではなくて、生涯賃金を予測する、ってところですね。
つまり将来性です。
ちなみに僕は、ポスドクだった昨年結婚しましたが、年収は満たしておりませんでした。
額面 330 万程度だったはず。
(容姿は満たしていたと願いたい)
お金を欲しがらない若いおっとりした女の子なら、人物評価してくれるはずです、きっとうちの妻はそうなんでしょう。
と願いたい。
というわけで、婚活女子のみなさん。
ギャンブル要素は強いけども高学歴で性格よし、いまはやりのオタクとの結婚に通じるものがあるポスドクとの結婚、おすすめです。
自分の見る目次第で、将来は大学教授夫人ですよ?
そのかわりあれです。
若いうちは共稼ぎで旦那様を支えてあげてくださいね。
日本に 215 人しかいない超優良物件、あなたも狙ってみてください。
と、婚活女性へのアピール記事のような体でポスドクへの興味を引き付ける作戦で。
まだ学位をとれない D5 の後輩が、友人の結婚式にいくたびに結婚願望が絶望にかわって泣きそうになる、かのようなことを言っておりました。
彼には幸せになってほしいです。
博士学生の進路
先日、こんな辺境の地まで大学院時代の後輩がやってきたので、飲んできた。
大学院時代の後輩、と言っても、彼は俺と同い年。
俺も彼も学部からずっと同じ某旧帝大だから、大学では 8 年一緒に過ごしたことになる。
彼はいまもドクターを取得できていない (していない?) ので、相変わらず同じ、僕の出身ラボにおり、つまり、D5 になる。
もうすごい古参だ。
研究室に初めて入ってから、8 年目になるんだろうな。
俺は B4 から D3 まで 6 年間在籍したのち学位取得して、それから今で 3 年目になるので、順調ならば 2 つ下の後輩まで、学位を得て卒業したことになる。
そこでちょっと、数えてみた。
俺があの研究室に 4 年生で入った時にいた先輩から、この春出た 2 つ下の後輩まであわせて、俺も含め計 14 人があのラボの博士課程に在籍している。
(フルタイムで大学のラボ内にいた人に限る)
その進路を、ちょっと数えてみた。
ということになった。
学生がいなかった年もあるので 7 年間。
いわゆる横綱ではないけど、その次点に来るレベルの地方旧帝大の、生物系基礎研究ラボの話です。
幸いアカポスは全員パーマネントなので、企業も含めると 43% 程度が将来の見通しがついていることになる。
学位取得後、そのポジションにいたるまでの平均年数は 18 年 ÷ 6 人で、3 年となった。
ちなみに全員 3 年で学位を取得している。
企業の 3 名のうち、学取得後すぐ就職したのが 2 名で、あとの 1 人が 6 年のポスドク生活ののち、今年からの就職ということだ。
上記の計算から、新卒就職者を除外すると、18 年 ÷ 4 人で 4.5 年ということになる。
では、次に将来未定の方たちについて。
中退の 1 名を外して考えると、残り 50% の将来が、未定ということになる。
ドクター入学後、将来が未定でい続けている平均年数は、今のところ 30 年 ÷ 7 人で 4.3 年。
これは時間がたつごとに増え続けるはずで、特に意味のない数字。
しかし、ポスドクをやっている 4 名のうち、2 名はとびきり優秀なので、近々なんとかなるんじゃないか、と期待はしているのだが。
優秀だからポジションがある、というわけじゃないのが頭のいたいところ。
衝撃なのが、俺が今まで見てきた中で、1 番優秀と言えるような先輩が、先ほど企業就職者のところで言及した、 6 年のポスドク生活ののちに就職した人だ。
アカポスについている 3 名よりも、優秀だったし、実績もあった。
人間性ももっとも素晴らしかった。
アカポスには俺も含まれているけど、俺なんてあの先輩に比べればゴミカスだった。
なぜそんなことになったのか、というと、優秀すぎたからだ、と俺は思う。
ボスが、大学外の研究機関に持つラボに先輩を引っ張り、進路への影響を与え続けたのだ。
もちろん大事に育てて重用し、進路に関してボスが責任を持つつもりではあったのだ。
中途半端なポジションではなく、立派なポジションにつけるよう、ボスがなんとかしてあげよう! と頑張ったのだ。
それは知っている。
しかし、ボスがそう思ったところで必ずしもうまくいくとは限らないのが今の世の中。
大学外のラボを、昨年たたむことになった。
そこでパーマネントが将来的に約束されている、と言われている新たなポスドク先へ、ボスの勧めもあって先輩は移った。
しかし、程なくして家族の生活も心配になり、本当に将来が約束されているのか信頼できない部分もあり、やむなく就職したそうだ。
いや、優秀なればこそ、就職先があったという気もするし、将来的にアカデミックに戻ってくる可能性もあるんじゃないかと思ってはいる。
が、現時点では、1 番優秀な先輩が、研究を去ってしまったのは事実だ。
これは我々後輩からしてもとても悲しいことだった。
ネット上の話を見ても、ボスの手元に残されたがゆえに、ボスの引退とともに助教からポスドクへ逆戻り、なんて話がいっぱい書かれている。
まさにそのパターンに近く、それにはまってしまったと言える。
そこまで優秀じゃない人は、ボスの手元に残されず、進路に影響力も受けない。
自分で妥協して、と言ったら失礼だけど、それほどランクの高くない大学や研究機関に、若いうちから職を探すことができる。
俺なんかがそれだ。
自分でも雇ってくれるアカポスがあるなら、どこだって僥倖、というくらいの気持ちだった。
優秀であるがゆえに、動くべき時に動けない環境に置かれてしまったことが、先輩の不運だと思う。
しかし、アカデミだけが人生ではないし、大事なことでもない。
家族を大切にして生きることは素晴らしいし、きれいごとじゃなくお金も大事だ。
就職先の企業でも、立派な社会貢献はできるはずだ。
人生いろいろある。
人格崩壊して、眉をひそめられながらいい研究をガンガンして出世するのも人生。
プライベートを重視し、他者を大切にし、結果それほど研究をしないのも人生。
家族を重視するのも人生。
家族を持たず、英知に貢献するも人生。
そこに優劣はないし、どの道も立派で尊敬できると思う。
(同時に尊敬できない部分もあるかもしれない?)
もちろん、家庭も大事にして、人格も素晴らしく、研究以外でも優れた知識を持ち、第一線で走り続ける研究者も、いっぱいいる。
が、誰もがそうはなれない。
人生においては、重視するものの取捨選択が大事だと思う。
選ばずともすべて得られる人はそのまま得たらいい。
わずかしか得られない人は、何にしぼって得るかを考えたらいい。
それが、後悔しない人生を生きる方法かもしれない。
俺も、まだまだ悩もうと思う。
パーマネント獲得へ
パーマネント助教になった。
しかも、死屍累々の生物系で。
バイオポスドク脱出しました。
ポスドク受難と言われてからドクターに進学したので、自分の将来のイメージがきちんと描けたことなんて 1 度もなかったが、なんとか落ち着けてしまった。
しかも、J-Rec に載っていたガチ公募、コネなしで。
自分より優秀な人はいくらでもいたし、自分より業績のある人はいくらでもいたと思う。
なぜ自分が受かったのか、と思うと 2 つ思い当たる点がある。
まず、公募時点でまだ 28 歳だったこと。
近年、35 前後で大量の業績を抱えている研究者は珍しくない。
しかし、できるだけ 30 歳程度までの人で決めたい、と思っているところは多いようだ。
あとは、カテゴリーがばっちり当てはまったこと。
募集内容とちょっとでもかぶっていれば強引に応募する人が多い。
それはそれで、とる側が納得すればいいのだけど、どちらかと言えばドンピシャの人が来てくれたほうが望ましいはず。
上記 2 つは、公募において重要な武器になるみたいです。
まあ、俺がこんなところで書かなくても語りつくされてるけどね。
業績や能力重視はもちろん重要だけど、業績だけで勝負するには、いくらでもいる高齢ポスドクに勝たなきゃいけない。
能力だけで勝負するなら、上を見れば NCS 出してる人なんかも普通にいるし、彼らに勝たなきゃ絶対に職はない。
いや、いずれにせよ、もちろんある程度の基準を満たしてるのは前提だよ。
「コネばっかでガチ公募がない」と嘆く人は多いけど、じゃあ本当にガチ公募されたいですか?
本当に論文の本数とインパクトファクターを点数化して、それだけで勝負になった場合、1 位になって勝てますか?
優秀な人に優秀さで勝つのは無理。
優秀な人たちと一緒にトップ 3 くらいに入って面接に呼ばれる、ならあっても、内定って No.1 でなければあり得ないわけだからね。
倍率 50 倍なら、49 人は落ちるから、合格者なんて誤差みたいなもんで、存在しないのと一緒だ。
2 位になっても落ちるから、“おしい”って概念は存在しない。
定員 1 名の公募では、“おしい”なんてない。
そんなわけで、俺が思う公募に立ち向かう基本的な考え方はこれです。
優秀な人相手に、優秀さで勝負しても無駄。
優秀さ以外の何で勝つか?
俺は、若さで職をもらえました。
若さが大前提で、その中での業績能力が認められたんだと思います。
若さが武器になるうちに、勝負してください。